slowな西なブログ

主に映画「スロウ・ウエスト」についてつらつらと。

もくじ

スロウ・ウエスト(Slow West)についてつらつらと書きました。

お暇なときに読んでいただければ。

 

1.ジョン・マクリーン監督とスロウ・ウエストができるまで。

2.スロウ・ウエストについて①(ネタバレ)

3.スロウ・ウエストについて②(ネタバレ)

スロウ・ウエストについて②(ネタバレ)

 

※ネタバレだらけです。未見の方は絶対に読まないでください!!

※話の流れに沿ってセリフ・アイテムの意味を「個人的に調べた範囲」で話します。

※全体の的確なレビューについてはBEAGLE the moviesさんを参照願います。

※以上大丈夫な方どうぞ

 

 

 

 

【ネタバレ②】

 

 ■4日目

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ワーナー「いくつかアドバイスが思いつくだろう。そして朝、面白おかしく盛り付けよう。新鮮な卵を添えてね」

翌朝目覚めると身ぐるみを剥がされてしまっているジェイ君。「西へ」と書かれた紙と生卵だけ置いてワーナーさんは去りました。

 

・ジェイ君が歩いた時間

脚本によると朝から昼までの「半日」です。彼にとっては「1週間何も食べていないかのような」空腹と疲労が襲っていたそうです。そこにサイラスとビスケット。

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・森に向かって平野を渡る2人

縦一列だった二人がだんだん横並びに…


・自ら切った木の下敷きになって死んだ人の変わり果てた姿

を見て、2人は並んで微笑みます。ジェイ君はダーウィン自然選択説(環境に適応した者が生き延びていく)を話し、サイラスはそれを拒否しています。

適応しない者。半日荒野を彷徨ったジェイ君は自分を重ね合わせてるのかもしれません。

それを否定するサイラス。


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・髭剃り

絶対にジェイ君髭生えてないと思うんですが笑

サイラスはジェイ君に大分心を許したんだろうというのが分かります。一種のスキンシップ…

ジェイ君は的確に「寂しがりや」とツッコミを入れ、サイラスを動揺させます笑


「how to skin a jack-rabbit.」というセリフがでます。

直訳だと「兎の皮はぎ」ですが、サイラスはナレーションで【兎=ジェイ君】の例えをしているので「ジェイ君の髭剃り」という意味になります。

男の子を野ウサギと例えるのもまた。大層かわいがっています。


このシーンでサイラスとジェイ君の立場が明確に変わり始めます。上下関係の逆転と言いますか、視点の転換と言いますか、ジェイ君が主人公の物語のはずがだんだんサイラスへ焦点が移ります。今まではっきり見えなかったサイラスの孤独・脆さ・優しさ・幼さが露わになっていきます。

 

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・ペイン が あらわれた

ずっと遠目からサイラスとジェイ君をストーキングしていたであろうペインが現れました。画像は宣材のもの。本編ではボタンを閉じてますが作る過程でボタンを外す案もあった模様です。えろすぎます。

ペインのコートは監督のインタビューを読む限りでは、「ギャンブラー( McCabe and Mrs. Miller)」や「アイアン・ホース」あといくつかの作品からきているとのことでした。寒いところから。山の方から来たのか。寒がり?

彼にはちょっと?ホモセクシャルな匂いがします。

「Fuck yourself Payne.」「I've tried...Believe me Ihave tried.」・・・。

 

アブサン

 アルコール度数70度前後の薬草系リキュール。別名「緑の妖精」。

ペイン「早い時間だが乾杯(To bad times in the green hour.)」とありますが、「グリーンアワー」という19世紀ヨーロッパでアブサンが流行し、仕事が終わった後にアブサンを飲むことをそう呼んでいたそうです。

森の緑とかけてるのか。ペインの台詞は洒落てるし含みがあるなと思います。しかしそれにしても未成年のジェイ君と酒弱いサイラスに無理やり飲ませるペイン。悪いヤツです。

アブサン - Wikipedia

芸術家が熱狂した「禁断の酒」アブサンを知る - NAVER まとめ

Bar Tram & Bar Trench: 第3回アブサン祭り”GREEN HOUR"(グリーンアワー)開催決定

Absinthe - Wikipedia, the free encyclopedia

 

・「日曜日生まれだろう?」

マザーグースの「月曜日に生まれた子供は」が元ネタだと思われます。

Monday’s child is fair of face,

Tuesday’s child is full of grace,

Wednesday’s child is full of woe,

Thursday’s child has far to go,

Friday’s child is loving and giving,

Saturday’s child works hard for a living,

And the child that is born on the Sabbath day

Is bonny and blithe, and good and gay.

 

月曜日生まれのこどもは器量がいい

火曜日生まれのこどもは品がいい

水曜日生まれのこどもはべそっかき

木曜日生まれのこどもは苦労をし

金曜日生まれのこどもは愛情豊かで

土曜日生まれのこどもは働き者で

日曜日に生まれたこどもはね、

可愛くて、明るくて、気立てがいい

 

マザーグースを知れば、英語も映画も物語もより深く理解できる!? | iKnow! BLOG(アイノウ ブログ)

 ジェイ君に「可愛いね…」とおちょくっているところのようです。悪い奴だ。

 

・ペイン「(ジェイも)俺たちと同じ立派なならず者だろう」

脚本には「この言葉はサイラスを悲しませたがジェイを喜ばせた」とあります。

 

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・ペイン「戻ってこい」

観た人が大体えっ!と動揺するシーン笑

過去この二人がどういう関係だったか匂わせます。

後のサイラスのナレーションで「ジェイの年齢の頃ペインの一味だった」とあります。

ジェイ君は16歳、サイラスは30代半ば…ざっと20年近くの縁なんだろうなと推測されま

す。

ペイン役の俳優ベン・メンデルソーンはインタビューでペインについて答えてます。 彼なりにサイラスを心配して近付いた、とのことです。

I’ve tracked him down. I know Fassbender from back in the day. He used to, as it were, run with my gang. I catch up to him and that’s a concern. For him, not for me.

 

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 ・ジェイ君、ほかのならず者たちに会う。

殺る気満々なキッドに対してスケリーおじいさんが「Back down kid, Payne needs him alive, you'll get your chance」と話しますが、字幕が違っていたような。

「下がれキッド。ペインは奴を生かすつもりだ。いずれチャンスはあるさ。」

名を上げることの無意味さ滑稽さをスケリーおじいさんは冗談を交えて諭します。

 

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・ジェイバード(Jay-bird)

個人的に、初見時度肝を抜かれたシーンです。ジェイ君とサイラスが同じ夢を共有するとは。ジェイバードは青カケスの意味です。青い鳥です。

ジェイ君はもちろん、後に登場するローズと仲良いインディアンの「コトーリ」のことも頭をよぎる名前です。

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アオカケス - Wikipedia

 

 ■5日目

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 ・目覚めると銃がない

脚本には「ペインは彼らの武器を全て盗んだ」とあります。犯人はペイン。

 

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・コトーリ(KOTORI)さん

「若く、ハンサムなネイティブアメリカン。開拓者のシャツとズボン」

2匹の大きな野ウサギを持ってます。意味深。

 

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・ローズ(ROSE ROSS)

ローズが作っているものはバターだそうです。バターってこんな作り方でしたっけ。これについては確証はないのですが、「 butter would not melt in one's mouth(虫も殺さぬ顔をしている、猫をかぶっている)」という言葉があります。後ほどのローズの凄腕ぶりを暗示しているのでしょうか。

 

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・サイラスとジェイ君を繋ぐ洗濯ロープ

何度見てもたまらなくかわいくて大好きなシーンです。服装も同じユニオンスーツで対になっています。兄弟のようでもあり、写し鏡のようでもあります。

 脚本には2人の間のロープの距離は「fifteen feet」(4.572メートル)とあります。

ちなみに2人とペインたちとの距離は「500yards」(457.2メートル)とあります。

100倍離れています。

 

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・シルバーゴーストの森で2人が諳んじているもの

ジェイ君が諳んじているのは「Psalm of David(詩篇91)」

サイラスが諳んじてるのはトマス・フッドの「幽霊屋敷」という英詩からの引用。

突然出てきたサイラスに詩の教養にジェイ君は驚き、笑みを浮かべます。サイラスのロマンチストな側面が見えます。

 

シルバーゴーストを抜け、ここから怒涛の銃撃戦がはじまります。

サイラスはジェイ君を木に縛り付け、日焼け止めを塗ってやり、ローズを助けに向かいます。

 

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・サイラスとローズの出会い

脚本には「サイラスはローズの美しさに感銘を受けた-ほんの少しだけ見えた片目だけでも」とあります。

ちなみに窓に貼られているのは油紙。

 

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案山子の帽子を被ったペインがビクターを背後から撃ち殺し、

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「ネイティブアメリカンの風見鶏」を撃ち本格的な銃撃が始まります。

 

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・サイラスが歌った曲

Am I a Soldier of the Cross という聖歌。

邦題は「十字架の兵士たる」(聖歌517番)または「私はキリスト教の闘士」

(Must) I be carried to the skies

On flowery beds of ease?

While others fought to win the prize,

And sailed through bloody seas?

 

私は天国へ運ばれてゆくのか

花で飾られた安楽な寝床にのって

他の者たちは金のために戦い

血生臭い海を渡って行ったのに

 

Isaac Watts, Hymn Writer biography - Christian Biography Resources

 

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・結末

初見時は本当に衝撃的で、気持ちの整理をつけるのに時間がかかりました…。

 

生き延びたい一心でローズは銃弾を放ち必中必殺で一味をペイン以外全滅させます。

ジェイ君は暗示していたとおり、ローズの銃弾に射抜かれ、最後の力でペインを撃ち殺し、ローズを守り、亡くなります。

サイラスはジェイ君の想いを受けとめ、ローズのところにとどまり、スウェーデン人の子供たちと一緒に農夫として暮らしていくのでした……。

きっと数年後にはジェイバードと呼ばれる男の子が生まれて、慎ましくもたくましい家族ができていく未来が見えます。

 

玄関に蹄鉄を上に向けて飾る

アイルランドの「幸運を招く」おまじないです。

サイラスのお父さんがアイルランド人なのでそうなりますね。

こうやって異国の文化がアメリカに根付いていくんだな、と感慨にひたります。

 



 ざっと調べたことは以上です。

多分もっと発見があると思うのですが、ひとまずまとめてみました。

何度観ても発見がありますし、この映画の前後の歴史も興味が沸いてきます。


この作品を観る以前、わたしは西部劇にずっと距離があったのですが、この映画ではじめて西部劇に親近感を覚えました。

この映画に出会えて良かったなと心から思います。ありがとうございますマクリーン監督…



調べたことの大半はスクリプトに載っています。

「Slow West script 」なんてweb検索するとすぐ出てきます。ト書きにユーモアがあり読みものとしてすごく面白いしページ数も80枚程度なので、英語少しでも読める方はオススメです。



映画の理解のきっかけになれば幸いです。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

 

 

スロウ・ウエストについて①(ネタバレ)

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「スロウ・ウエスト」

原題:Slow West
2015/イギリス、ニュージーランド 上映時間84分
監督・脚本:ジョン・マクリーン
製作:イアン・カニング、Conor McCaughan、Rachel Gardner
製作総指揮:マイケル・ファスベンダー、キャサリン・バトラー、ジギー・カマサ
撮影:ロビー・ライアン
美術:ケン・ターナー
衣装:Kirsty Cameron
出演:コディ・スミット=マクフィー、マイケル・ファスベンダーベン・メンデルソーン、カレン・ピストリアス、ほか

 

あらすじ

19世紀アメリカ、コロラドスコットランドの青年貴族ジェイは、何も言わずに旅立った恋人ローズを捜して単身米国へとやって来た。東海岸から西部へ向けて旅を続けるジェイだが、未開地で荒くれ者に襲われ、危ういところをサイラスという謎めいた賞金稼ぎに助けられる。サイラスを用心棒に雇い、ローズを捜す旅を続けるジェイ。だがジェイは気付かなかったものの、サイラスは途中の町でローズとその父が賞金首であることを知る。

※wowowHP内作品ページより抜粋

 

2016になってwowow放送され、一部劇場でも限定公開されたスロウ・ウエスト。

全ての要素が大好きな映画なのですが、大好きなりに調べたことをブログに残しておこうと思います。話の流れに沿って、セリフやアイテムの意味についてスクリプト・インタビューにある情報をつらつらと書きたいと思います。 

なので、未見の方はこれ以降絶対に読まないでください。

一番おいしい部分を話すので観たら大損です。できれば2周・3周してあれやこれや思ったり考えたりしてから読んだ方が絶対に良いです。

 

 

全体の的確な解説はこちら↓のサイトのレビューが名文なので、こちらの一読をオススメします。

 

 



 

上記クリアされた方は以下をどうぞ。はじめます。

 

 


【ネタバレ】

スロウ・ウエストは目に映る範囲では、5日間の旅路です。キーワードの羅列、箇条書きで進めます。

 

■1日目

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・昔々、具体的には1870年、コロラド準州

唐突にサイラスのナレーションからはじまりました。

初見時は何がなんだかでしたが、これが2周目3周目観るとこの意味がいかに重要か胸に響きます。「むかーしむかし」という寓話の側面もありつつ「1870年」という歴史を背負ってる側面もありつつと、この映画独特の立ち位置が表されています。

1870年という時代設定は、歴史詳しくないのですが、

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1848年 カリフォルニアで金鉱発見(カリフォルニア・ゴールドラッシュ)

1860年 南北戦争がはじまる

1865年 南北戦争終結、リーンカーン大統領暗殺

1869年 大陸横断鉄道開通

1876年 コロラド準州、州に昇格。

1890年 フロンティアの消滅

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と、前後ともに激動の時代です。西部開拓時代の真っただ中、様々な国から来た移民の大移動、ネイティブ・アメリカンへの虐殺、インディアン戦争、奴隷問題、南北戦争、近代化、混沌としています。前年に大陸横断鉄道が開通しています。

マクリーン監督はインタビューでこの映画の参考に大陸横断鉄道開通までを描いたジョン・フォード監督作「アイアン・ホース」を何度も挙げています。

ここから更に人や物や情報の流れが速く進んでいくわけで、この1870年はちょうど時代がかわる境目の年なのかもしれません。

舞台のコロラド準州ですが、ここでは1864年「サンドクリークの虐殺」がありました。

虐殺です・・・詳細は検索。ぞっとします。

物語の最初に映る人々が如何に過酷な状況か、直接は見せないですが匂わせます。そんな時代のそんな場所にスコットランドの貴族の坊ちゃんのジェイ君がやってくるわけです。大変危険な状況です。ほんと生きていたのは奇跡;;;


あと重要なのはサイラスがナレーションがしているところ。彼が語り部ということは…

結末が開口一番で示されているという…たまらない語り口です。

 

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・オリオン座を銃でなぞるジェイ君
追い打ちです。オリオン座の神話といえば、愛するアルテミスの弓矢に射抜かれて死ぬオリオン。後ほどのジェイ君とローズの回想シーンを含め、結末が示唆されています。

 

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・インディアンを殺そうと追う兵士たち

 北軍兵士の恰好していますが、服の崩れ方からして落ちぶれてます。インディアン狩りをすることで利益になった時代。

 

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・サイラス登場

 脚本には「30代半ば、引き締まった身体(lean)、壮健(fit)。サイラスは汚れがこびりついるが目だけは澄んでいた(clean)。野蛮(WILD)に見えるが、しかし…」と書かれています。

・西部の歩き方(Ho for the West)

実在した本みたいです。

 

・縦一列で出発

位置関係で2人の心の距離が分かります。2人の間に上下関係があります。これがのちに…

 

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・3人のアフリカ人

脚本には「埃まみれのぼろぼろの北軍兵士の服を着ている、輪になって座っている、一人はその場しのぎの車椅子に、一人は松葉杖をついていた、南北戦争で負傷した」と書かれています。本編の服装はそうは見えなかったのですが、そういった経緯での負傷は考えられます。

 

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・7人の男と1人の女がサイラスとジェイを見ている。

出ましたペイン。色気がすごいです。大好きです。

脚本には名前と見た目の説明が書かれています。

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1.刺青の男(TATOO MAN) 

中国人。伝統的な中国の服装、長い黒髪と髭

2.吟遊詩人(THE MINSTREL)

ボブ・ディラン風の音楽家。羽付き帽子、バンジョーを背負ってる。

3.マリマチョ(MARIMACO)

メキシコ人の女性。ポンチョ、三つ編みの髪

MARIMACO=おてんば、男勝りの女の意味

4.スケリー(SKELLY)

 しわくちゃの砂金堀り(金鉱探し)の恰好の老人。広めの中折れ帽。白鬚。

5.キッド(THE KID)

ハンサムな若者、尊大な顔つき

6.ペヨーテ・ジョー(PEYOTE JOE)

狂った顔つきのギョロ目の男。麻薬と酒のせいで実際の年齢より老けている。

7.ペイン(PAYNE)

一味のリーダー。巨大な毛皮のコート、煙草。

ペインは興味深く、訳知り顔で半笑いを浮かべてサイラスとジェイを観ている。

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とあります。様々な国・事情で集まっている人たちだという事が分かります。

 

…あと蛇足なんですが、

謎なんですけど、8人目については書かれていないんです。

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 左から2番目↑の人

でも、次のシーンからいなくなってるんですよね…。

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1.2.3.4.5.6.7...8人目がいない…

謎です。彼の行方を知ってる方いらっしゃいましたらご連絡ください。

 

 ・狼と野ウサギ

夜での描写、脚本には書かれていないですが、ペインたちらしき?足音・馬が走り去る音が聞こえます。そして狼の遠吠え。この映画では何回かサイラスのセリフやモチーフに狼(wolf)と野ウサギ(jack rabbit)がでてきます。

狼はならず者の象徴野ウサギはジェイ君を指すようです。

ちなみに脚本には、この夜ジェイ君が捨てた残飯は「兎の骨」と書かれています。ははは。

1日目が終わります。

 

■2日目

ジェイとサイラスはバッファローの骨を仲良くどけたりして交易所にやってきました。

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・聖職者の恰好をした賞金稼ぎの男

ビクター(VICTOR THE HAWK)という名前だそうです。(カッコイイ…)

後ほど偽名?でVICTOR SELFと名乗ります。攻めてます。

 

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・交易所

昔、白人とインディアンが交易の為に使った場所で、品物を持ち寄り、物々交換をした交流の場所。

(こちらのサイトより引用)

店主が当然のごとくウイスキーを勧めてきますが、サイラスは酒を断ります。

酒が弱いのか、他に理由があるのか、酒を避けています。

 

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・寄る辺ない若夫婦

ヨアン(JOHAN)さんとマリア(MARIA)さん。

脚本には「スウェーデン人、若い夫婦、旅で汚れた服。不安そうに動き、神経質に、切羽詰まった目。ヨハンは痩せこけている。イングマール・ベルイマンの「恥」を参照。」とあります。

 

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 ・Breathe in .. And out

「ジェイはサイラスの声に合わせて深呼吸をする。サイラスは実際は(マリアさんではなく)ジェイへ話している。彼を落ち着かせ、指示している。やるように。」

結果的に ジェイ君がマリアさんを撃ち殺すことに。

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・若夫婦の子供たち

 「女の子は10歳、男の子は6歳。ブロンドの髪、かわいい。」

・サイラスの口笛

「yankee doodle」。アメリカ独立戦争時の愛国歌。

アメリカは残酷な世界なんだぜーとワルぶってますけど、心は泣いています。

日本だとアルプス一万尺

 

ジェイは口笛を吹くサイラスの背中を見て、血も涙もない奴と勘違いしてしまいます。ローズとの思い出や彼女と彼女のお父さんが追われる原因になった事件を思い返しつつサイラスの許を離れます。

 

■3日目

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・ワーナー(WERNER)さん

「ドイツ訛り」「見た目も聞こえもヴェルナー・ヘルツォーク似」だそうです。

彼が言っていることは観客の視点に通じるのかなというところ。選り好みの郷愁。美化して語られる過去。

優しそうなワーナーさんに出会うも、ジェイ君は気を許し過ぎて初対面なのにいきなり「人を殺しちゃった」と告白してしまいます。 

 

あと2日分ですが、ここから長いので分割します。

【続きの4日目.5日目はこちらへ。】

ジョン・マクリーン監督とスロウ・ウエストができるまで。

 

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ジョン・マクリーン監督(John Maclean)。真ん中に映っている方。

日本語の記事があまりないので、素人ながらざっくり書きたいと思います。

 

スコットランド出身。

エディンバラ・カレッジ・オブ・アート卒、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート修士課程修了。元「The Beta Band (ベータ・バンド)」のメンバー。異色の経歴です。

活動中にバンドのミュージックビデオを8割方作っていたそうです。

これらミュージックビデオ制作が映画を作るにあたっての学びの場になったそうです。

 

独特。

監督にSF撮ってほしい…

監督が2名表記のようですが、個人的に大好きなビデオ。

 

 

そしてバンド解散後、転機が訪れます。

マクリーン監督はエージェントのConor McCaughan(現・ファスベンダーのプロダクション「DMCfilms」のプロデューサーの一人)の紹介でマイケル・ファスベンダーと出会います。ミュージックビデオを見てファスベンダーは気に入り、ファスベンダー「何か作ってみない?」監督「ああぜひとも!」と意気投合。

 

ファスベンダーの多忙スケジュールの合間を縫って短期間で

短編映画1作目「 Man on a Motorcycle」(2009) を撮ります。

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「 Man on a Motorcycle」(2009)

本編がどこにも公開されていない幻の短編です。(以前はオンラインで観れたようですが…観たい…)

インタビューを読む限りでは携帯電話のカメラ(!)で撮影・編集をしたそうです。 

ファスベンダーが多忙だった為彼の撮影期間はわずか1日。

手ごたえを感じたのか、ファスベンダーとのタッグが続きます。

 

続いて短編映画2作目「Pitch Black Heist」(2011)

「Pitch Black Heist」(2011)

真っ暗闇で強盗。

残念ながら日本語字幕はないですが、英語字幕付きの本編がiTunesで配信されています。

撮影期間は3日。

この作品で2012の英国アカデミー賞(BAFTA)の短編映画部門を受賞しました。

 

 

そして長編映画「スロウ・ウエスト(Slow West)」(2015)

「Slow West」(2015)

2013年の11月~12月に主にニュージーランド(一部スコットランド)で撮影されました。撮影期間は約2週間(早い!)。この作品は2015年1月サンダンス映画祭でお披露目、観客賞を受賞しました。監督自身も第36回ロンドン映画批評家協会賞でブレイクスルー英国映画作家賞を受賞しました。

 

監督はSlow West公開時にたくさんのインタビューに答えていらっしゃっているのですが、作るまでの経緯、参考で挙げている作品など興味深かったです。そのうちの一つ、一部分を抄訳したいと思います。

 

-スクリーンで観た西部劇体験を教えてください。

多分父と観た70年代後半の変わり種な西部劇たちが始まりだと思う。コメディ西部劇とかローンレンジャーとか。映画の内容は思い出せないけど映画館に行ったときの体験は覚えているよ。非常にロマンティックな体験だった。

エディンバラ大学にいた頃、映画館で働いていたんだ、そこは深夜に二本立て上映をしていた。その中の1本に「ウエスタン」があった。西部劇について全く知らなかった僕は驚いた。それは70年代、60年代、50年代、40年代、30年代…と時間をさかのぼるような発見の旅だった。

 ただ「スロウ・ウエスト」を作る際、僕は西部劇からの影響を受けないように非常に意識していた。だから僕は日本映画からロベール・ブレッソン監督までありとあらゆる映画を観た。

 

-黒澤は明らかに西部劇に大きな影響を受けていましたが、あなたは小津作品のようなものを観たのですか?

僕の映画にはたくさんの固定ショットがある。砂の女「鬼婆」のような作品を、表現の簡潔さ、森での撮影、静けさの表現の為に観たよ。

 

 -ブレッソンを言及しましたね。「スリ」のモンタージュのアイデアですか?

うん。「スリ」「抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-」だね。

僕は彼の編集の組み立て方の大ファンなんだ。たくさんの手のショットと固定ショットをまるでジグソーパズルのようにして組み合わせるんだ。

 

-スロウ・ウエストはとてもユニークな西部劇ですね

スクリプトを書き始めたとき、初期の日本映画について多く考えていた。

森での撮影について多く考えていた。マイケル(・ファスベンダー)を得られなかった場合、如何に低予算でカウボーイの恰好の人物を見栄えよく撮れるかをね。

スイングドアのある西部の町は求めなかった。

 

-撮影場所は?

スクリプトを完成させたとき、僕はコロラド州で撮りたいと言ったんだ。

現実と実際的なことが動き始めて、突然マイケルのスケジュールで11月・12月が空いたんだ。冬のコロラドから夏のニュージーランドへ変更を余儀なくされた。

コロラド州を連想させるようなものがなかったら僕は行かなかったけどニュージーランドは信じ込まなくても自然とコロラドにいるかのような場所がたくさんあった。

フィルムの編集が完成に近づいたころ、人々がカットを見始めたとき、「ああ、私はその場所が実際あったのか分からなくなったり、アメリカの景色と見分けがつかなかったりするところが本当に好きでした」と言ったんだ。

ニュージーランドで撮ったことで、そういった思い思いの解釈に陥ったりおとぎ話のような世界に陥ったり、夢のような語り口の側面がでるとは思いもしなかった。

 

-ファスベンダーを得たことは軽視できませんね

彼は僕と働く必要はなかった。即座に、彼は非常に寛大だった。

彼は最高の監督・最高の予算・大作映画のオファーがあった。それをこの映画を撮るために断ったんだ。

 

-そしてベン・メンデルソーンは?

彼と一緒に働けたのは嬉しかった。残念なことに彼といれたのはたったの3日間だった。なぜそうなったかというと、つまり、あなたはベンを手に入れることができる、ただし3日間だけ。もしくは僕たちは2週間働ける他の誰かを選ぶこともできる。

僕は2週間働ける他の俳優より3日間の彼の方がさらに多くのものを得られると考えた。だから彼を選んだ。

彼は素晴らしい。

 

-そしてあのジャケット!

あのコートはスクリプトに書いてあったよ。スクリプトには多くの衣装についての参照がある。コートは「ギャンブラー( McCabe and Mrs. Miller)」「アイアン・ホース」あといくつかの作品からきている。

この映画は僕が俳優のいずれかに参考にと与えた唯一の映画だ。僕は「ギャンブラー」のマッケイブのような礼儀正しさと上品さでもって脅迫するような悪者がとにかく大好きなんだ。

 

 他のインタビューでは「可能な限りあらゆる西部劇を観た」と話していたり、他ジョン・カーペンター要塞警察」「荒野の決闘」「赤い河」「東京物語」「ダイ・ハード」「恥」(イングマール・ベルイマン監督作)「地獄の逃避行」「天国の日々」「荒野のストレンジャー」「続・夕陽のガンマン」etc…と挙げています。

 

西部劇といったら乾いた空気。画面は荒野の黄色と空の青と思っていたのですが、

スロウ・ウエストは森のシーンが続く緑多く水気のある奇妙な西部劇。

私は初見時、意外と思いつつ妙に親近感が湧いてました。インタビュー読むと邦画の要素からきているのかな…とちょっと思ったり。

 

ファスベンダーのプロダクション主導なのでそれが前面に出るのは仕方ないですが、

撮影の美しさは撮影監督ロビー・ライアンによるところが大きいと思うのですが、

ただやはりこの映画の成功はジョン・マクリーン監督兼脚本なくしてはなかったと思います。練りに練った脚本・隅々まで行き届いた音響・構成。あと作品内を包む温かさ。

この監督でしか出会えない映画体験があると感じています。

 

 ざっくりとした紹介としてはこういう感じでしょうか…。

ファスベンダー総指揮が続くのか、または別の道があるのか、とにかくマクリーン監督の次回作が楽しみで仕方ないです。 

 

<参照したもの>

ジョン・マクリーン監督のiMDbページ

http://www.imdb.com/name/nm3304468/?ref_=nmawd_awd_nm

ジョン・マクリーン監督についてのwiki

https://en.wikipedia.org/wiki/John_Maclean_(film_director)

The Beta Bandミュージックビデオ作品リスト

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Best_of_The_Beta_Band

 

 

Pitch Black Heist公開のときのインタビュー記事

http://guru.bafta.org/short-film-winner-2012-pitch-black-heist

http://www.ideastap.com/IdeasMag/all-articles/John-Maclean-Pitch-Black-Heist

Slow West公開のときのインタビュー記事

Slow West: ‘Working with Fassbender was like being in a band and riffing’ | Film | The Guardian

John Maclean on Slow West - Film4

Full interview: Director John Maclean on ‘Slow West’, The Flicks Interviews - Flicks.co.nz Mobile

Interview: Slow West Director John Maclean - ComingSoon.net

Interview: Director John Maclean Talks Slow West

Interview: Director John Maclean Talks SLOW WEST, Spielberg And More - ScreenAnarchy