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slowな西なブログ

主に映画「スロウ・ウエスト」についてつらつらと。

ジョン・マクリーン監督とスロウ・ウエストができるまで。

 

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ジョン・マクリーン監督(John Maclean)。真ん中に映っている方。

日本語の記事があまりないので、素人ながらざっくり書きたいと思います。

 

スコットランド出身。

エディンバラ・カレッジ・オブ・アート卒、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート修士課程修了。元「The Beta Band (ベータ・バンド)」のメンバー。異色の経歴です。

活動中にバンドのミュージックビデオを8割方作っていたそうです。

これらミュージックビデオ制作が映画を作るにあたっての学びの場になったそうです。

 

独特。

監督にSF撮ってほしい…

監督が2名表記のようですが、個人的に大好きなビデオ。

 

 

そしてバンド解散後、転機が訪れます。

マクリーン監督はエージェントのConor McCaughan(現・ファスベンダーのプロダクション「DMCfilms」のプロデューサーの一人)の紹介でマイケル・ファスベンダーと出会います。ミュージックビデオを見てファスベンダーは気に入り、ファスベンダー「何か作ってみない?」監督「ああぜひとも!」と意気投合。

 

ファスベンダーの多忙スケジュールの合間を縫って短期間で

短編映画1作目「 Man on a Motorcycle」(2009) を撮ります。

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「 Man on a Motorcycle」(2009)

本編がどこにも公開されていない幻の短編です。(以前はオンラインで観れたようですが…観たい…)

インタビューを読む限りでは携帯電話のカメラ(!)で撮影・編集をしたそうです。 

ファスベンダーが多忙だった為彼の撮影期間はわずか1日。

手ごたえを感じたのか、ファスベンダーとのタッグが続きます。

 

続いて短編映画2作目「Pitch Black Heist」(2011)

「Pitch Black Heist」(2011)

真っ暗闇で強盗。

残念ながら日本語字幕はないですが、英語字幕付きの本編がiTunesで配信されています。

撮影期間は3日。

この作品で2012の英国アカデミー賞(BAFTA)の短編映画部門を受賞しました。

 

 

そして長編映画「スロウ・ウエスト(Slow West)」(2015)

「Slow West」(2015)

2013年の11月~12月に主にニュージーランド(一部スコットランド)で撮影されました。撮影期間は約2週間(早い!)。この作品は2015年1月サンダンス映画祭でお披露目、観客賞を受賞しました。監督自身も第36回ロンドン映画批評家協会賞でブレイクスルー英国映画作家賞を受賞しました。

 

監督はSlow West公開時にたくさんのインタビューに答えていらっしゃっているのですが、作るまでの経緯、参考で挙げている作品など興味深かったです。そのうちの一つ、一部分を抄訳したいと思います。

 

-スクリーンで観た西部劇体験を教えてください。

多分父と観た70年代後半の変わり種な西部劇たちが始まりだと思う。コメディ西部劇とかローンレンジャーとか。映画の内容は思い出せないけど映画館に行ったときの体験は覚えているよ。非常にロマンティックな体験だった。

エディンバラ大学にいた頃、映画館で働いていたんだ、そこは深夜に二本立て上映をしていた。その中の1本に「ウエスタン」があった。西部劇について全く知らなかった僕は驚いた。それは70年代、60年代、50年代、40年代、30年代…と時間をさかのぼるような発見の旅だった。

 ただ「スロウ・ウエスト」を作る際、僕は西部劇からの影響を受けないように非常に意識していた。だから僕は日本映画からロベール・ブレッソン監督までありとあらゆる映画を観た。

 

-黒澤は明らかに西部劇に大きな影響を受けていましたが、あなたは小津作品のようなものを観たのですか?

僕の映画にはたくさんの固定ショットがある。砂の女「鬼婆」のような作品を、表現の簡潔さ、森での撮影、静けさの表現の為に観たよ。

 

 -ブレッソンを言及しましたね。「スリ」のモンタージュのアイデアですか?

うん。「スリ」「抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-」だね。

僕は彼の編集の組み立て方の大ファンなんだ。たくさんの手のショットと固定ショットをまるでジグソーパズルのようにして組み合わせるんだ。

 

-スロウ・ウエストはとてもユニークな西部劇ですね

スクリプトを書き始めたとき、初期の日本映画について多く考えていた。

森での撮影について多く考えていた。マイケル(・ファスベンダー)を得られなかった場合、如何に低予算でカウボーイの恰好の人物を見栄えよく撮れるかをね。

スイングドアのある西部の町は求めなかった。

 

-撮影場所は?

スクリプトを完成させたとき、僕はコロラド州で撮りたいと言ったんだ。

現実と実際的なことが動き始めて、突然マイケルのスケジュールで11月・12月が空いたんだ。冬のコロラドから夏のニュージーランドへ変更を余儀なくされた。

コロラド州を連想させるようなものがなかったら僕は行かなかったけどニュージーランドは信じ込まなくても自然とコロラドにいるかのような場所がたくさんあった。

フィルムの編集が完成に近づいたころ、人々がカットを見始めたとき、「ああ、私はその場所が実際あったのか分からなくなったり、アメリカの景色と見分けがつかなかったりするところが本当に好きでした」と言ったんだ。

ニュージーランドで撮ったことで、そういった思い思いの解釈に陥ったりおとぎ話のような世界に陥ったり、夢のような語り口の側面がでるとは思いもしなかった。

 

-ファスベンダーを得たことは軽視できませんね

彼は僕と働く必要はなかった。即座に、彼は非常に寛大だった。

彼は最高の監督・最高の予算・大作映画のオファーがあった。それをこの映画を撮るために断ったんだ。

 

-そしてベン・メンデルソーンは?

彼と一緒に働けたのは嬉しかった。残念なことに彼といれたのはたったの3日間だった。なぜそうなったかというと、つまり、あなたはベンを手に入れることができる、ただし3日間だけ。もしくは僕たちは2週間働ける他の誰かを選ぶこともできる。

僕は2週間働ける他の俳優より3日間の彼の方がさらに多くのものを得られると考えた。だから彼を選んだ。

彼は素晴らしい。

 

-そしてあのジャケット!

あのコートはスクリプトに書いてあったよ。スクリプトには多くの衣装についての参照がある。コートは「ギャンブラー( McCabe and Mrs. Miller)」「アイアン・ホース」あといくつかの作品からきている。

この映画は僕が俳優のいずれかに参考にと与えた唯一の映画だ。僕は「ギャンブラー」のマッケイブのような礼儀正しさと上品さでもって脅迫するような悪者がとにかく大好きなんだ。

 

 他のインタビューでは「可能な限りあらゆる西部劇を観た」と話していたり、他ジョン・カーペンター要塞警察」「荒野の決闘」「赤い河」「東京物語」「ダイ・ハード」「恥」(イングマール・ベルイマン監督作)「地獄の逃避行」「天国の日々」「荒野のストレンジャー」「続・夕陽のガンマン」etc…と挙げています。

 

西部劇といったら乾いた空気。画面は荒野の黄色と空の青と思っていたのですが、

スロウ・ウエストは森のシーンが続く緑多く水気のある奇妙な西部劇。

私は初見時、意外と思いつつ妙に親近感が湧いてました。インタビュー読むと邦画の要素からきているのかな…とちょっと思ったり。

 

ファスベンダーのプロダクション主導なのでそれが前面に出るのは仕方ないですが、

撮影の美しさは撮影監督ロビー・ライアンによるところが大きいと思うのですが、

ただやはりこの映画の成功はジョン・マクリーン監督兼脚本なくしてはなかったと思います。練りに練った脚本・隅々まで行き届いた音響・構成。あと作品内を包む温かさ。

この監督でしか出会えない映画体験があると感じています。

 

 ざっくりとした紹介としてはこういう感じでしょうか…。

ファスベンダー総指揮が続くのか、または別の道があるのか、とにかくマクリーン監督の次回作が楽しみで仕方ないです。 

 

<参照したもの>

ジョン・マクリーン監督のiMDbページ

http://www.imdb.com/name/nm3304468/?ref_=nmawd_awd_nm

ジョン・マクリーン監督についてのwiki

https://en.wikipedia.org/wiki/John_Maclean_(film_director)

The Beta Bandミュージックビデオ作品リスト

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Best_of_The_Beta_Band

 

 

Pitch Black Heist公開のときのインタビュー記事

http://guru.bafta.org/short-film-winner-2012-pitch-black-heist

http://www.ideastap.com/IdeasMag/all-articles/John-Maclean-Pitch-Black-Heist

Slow West公開のときのインタビュー記事

Slow West: ‘Working with Fassbender was like being in a band and riffing’ | Film | The Guardian

John Maclean on Slow West - Film4

Full interview: Director John Maclean on ‘Slow West’, The Flicks Interviews - Flicks.co.nz Mobile

Interview: Slow West Director John Maclean - ComingSoon.net

Interview: Director John Maclean Talks Slow West

Interview: Director John Maclean Talks SLOW WEST, Spielberg And More - ScreenAnarchy