slowな西なブログ

主に映画「スロウ・ウエスト」についてつらつらと。

スロウ・ウエストについて①(ネタバレ)

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「スロウ・ウエスト」

原題:Slow West
2015/イギリス、ニュージーランド 上映時間84分
監督・脚本:ジョン・マクリーン
製作:イアン・カニング、Conor McCaughan、Rachel Gardner
製作総指揮:マイケル・ファスベンダー、キャサリン・バトラー、ジギー・カマサ
撮影:ロビー・ライアン
美術:ケン・ターナー
衣装:Kirsty Cameron
出演:コディ・スミット=マクフィー、マイケル・ファスベンダーベン・メンデルソーン、カレン・ピストリアス、ほか

 

あらすじ

19世紀アメリカ、コロラドスコットランドの青年貴族ジェイは、何も言わずに旅立った恋人ローズを捜して単身米国へとやって来た。東海岸から西部へ向けて旅を続けるジェイだが、未開地で荒くれ者に襲われ、危ういところをサイラスという謎めいた賞金稼ぎに助けられる。サイラスを用心棒に雇い、ローズを捜す旅を続けるジェイ。だがジェイは気付かなかったものの、サイラスは途中の町でローズとその父が賞金首であることを知る。

※wowowHP内作品ページより抜粋

 

2016になってwowow放送され、一部劇場でも限定公開されたスロウ・ウエスト。

全ての要素が大好きな映画なのですが、大好きなりに調べたことをブログに残しておこうと思います。話の流れに沿って、セリフやアイテムの意味についてスクリプト・インタビューにある情報をつらつらと書きたいと思います。 

なので、未見の方はこれ以降絶対に読まないでください。

一番おいしい部分を話すので観たら大損です。できれば2周・3周してあれやこれや思ったり考えたりしてから読んだ方が絶対に良いです。

 

 

全体の的確な解説はこちら↓のサイトのレビューが名文なので、こちらの一読をオススメします。

 

 



 

上記クリアされた方は以下をどうぞ。はじめます。

 

 


【ネタバレ】

スロウ・ウエストは目に映る範囲では、5日間の旅路です。キーワードの羅列、箇条書きで進めます。

 

■1日目

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・昔々、具体的には1870年、コロラド準州

唐突にサイラスのナレーションからはじまりました。

初見時は何がなんだかでしたが、これが2周目3周目観るとこの意味がいかに重要か胸に響きます。「むかーしむかし」という寓話の側面もありつつ「1870年」という歴史を背負ってる側面もありつつと、この映画独特の立ち位置が表されています。

1870年という時代設定は、歴史詳しくないのですが、

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1848年 カリフォルニアで金鉱発見(カリフォルニア・ゴールドラッシュ)

1860年 南北戦争がはじまる

1865年 南北戦争終結、リーンカーン大統領暗殺

1869年 大陸横断鉄道開通

1876年 コロラド準州、州に昇格。

1890年 フロンティアの消滅

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と、前後ともに激動の時代です。西部開拓時代の真っただ中、様々な国から来た移民の大移動、ネイティブ・アメリカンへの虐殺、インディアン戦争、奴隷問題、南北戦争、近代化、混沌としています。前年に大陸横断鉄道が開通しています。

マクリーン監督はインタビューでこの映画の参考に大陸横断鉄道開通までを描いたジョン・フォード監督作「アイアン・ホース」を何度も挙げています。

ここから更に人や物や情報の流れが速く進んでいくわけで、この1870年はちょうど時代がかわる境目の年なのかもしれません。

舞台のコロラド準州ですが、ここでは1864年「サンドクリークの虐殺」がありました。

虐殺です・・・詳細は検索。ぞっとします。

物語の最初に映る人々が如何に過酷な状況か、直接は見せないですが匂わせます。そんな時代のそんな場所にスコットランドの貴族の坊ちゃんのジェイ君がやってくるわけです。大変危険な状況です。ほんと生きていたのは奇跡;;;


あと重要なのはサイラスがナレーションがしているところ。彼が語り部ということは…

結末が開口一番で示されているという…たまらない語り口です。

 

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・オリオン座を銃でなぞるジェイ君
追い打ちです。オリオン座の神話といえば、愛するアルテミスの弓矢に射抜かれて死ぬオリオン。後ほどのジェイ君とローズの回想シーンを含め、結末が示唆されています。

 

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・インディアンを殺そうと追う兵士たち

 北軍兵士の恰好していますが、服の崩れ方からして落ちぶれてます。インディアン狩りをすることで利益になった時代。

 

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・サイラス登場

 脚本には「30代半ば、引き締まった身体(lean)、壮健(fit)。サイラスは汚れがこびりついるが目だけは澄んでいた(clean)。野蛮(WILD)に見えるが、しかし…」と書かれています。

・西部の歩き方(Ho for the West)

実在した本みたいです。

 

・縦一列で出発

位置関係で2人の心の距離が分かります。2人の間に上下関係があります。これがのちに…

 

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・3人のアフリカ人

脚本には「埃まみれのぼろぼろの北軍兵士の服を着ている、輪になって座っている、一人はその場しのぎの車椅子に、一人は松葉杖をついていた、南北戦争で負傷した」と書かれています。本編の服装はそうは見えなかったのですが、そういった経緯での負傷は考えられます。

 

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・7人の男と1人の女がサイラスとジェイを見ている。

出ましたペイン。色気がすごいです。大好きです。

脚本には名前と見た目の説明が書かれています。

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1.刺青の男(TATOO MAN) 

中国人。伝統的な中国の服装、長い黒髪と髭

2.吟遊詩人(THE MINSTREL)

ボブ・ディラン風の音楽家。羽付き帽子、バンジョーを背負ってる。

3.マリマチョ(MARIMACO)

メキシコ人の女性。ポンチョ、三つ編みの髪

MARIMACO=おてんば、男勝りの女の意味

4.スケリー(SKELLY)

 しわくちゃの砂金堀り(金鉱探し)の恰好の老人。広めの中折れ帽。白鬚。

5.キッド(THE KID)

ハンサムな若者、尊大な顔つき

6.ペヨーテ・ジョー(PEYOTE JOE)

狂った顔つきのギョロ目の男。麻薬と酒のせいで実際の年齢より老けている。

7.ペイン(PAYNE)

一味のリーダー。巨大な毛皮のコート、煙草。

ペインは興味深く、訳知り顔で半笑いを浮かべてサイラスとジェイを観ている。

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とあります。様々な国・事情で集まっている人たちだという事が分かります。

 

…あと蛇足なんですが、

謎なんですけど、8人目については書かれていないんです。

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 左から2番目↑の人

でも、次のシーンからいなくなってるんですよね…。

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1.2.3.4.5.6.7...8人目がいない…

謎です。彼の行方を知ってる方いらっしゃいましたらご連絡ください。

 

 ・狼と野ウサギ

夜での描写、脚本には書かれていないですが、ペインたちらしき?足音・馬が走り去る音が聞こえます。そして狼の遠吠え。この映画では何回かサイラスのセリフやモチーフに狼(wolf)と野ウサギ(jack rabbit)がでてきます。

狼はならず者の象徴野ウサギはジェイ君を指すようです。

ちなみに脚本には、この夜ジェイ君が捨てた残飯は「兎の骨」と書かれています。ははは。

1日目が終わります。

 

■2日目

ジェイとサイラスはバッファローの骨を仲良くどけたりして交易所にやってきました。

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・聖職者の恰好をした賞金稼ぎの男

ビクター(VICTOR THE HAWK)という名前だそうです。(カッコイイ…)

後ほど偽名?でVICTOR SELFと名乗ります。攻めてます。

 

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・交易所

昔、白人とインディアンが交易の為に使った場所で、品物を持ち寄り、物々交換をした交流の場所。

(こちらのサイトより引用)

店主が当然のごとくウイスキーを勧めてきますが、サイラスは酒を断ります。

酒が弱いのか、他に理由があるのか、酒を避けています。

 

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・寄る辺ない若夫婦

ヨアン(JOHAN)さんとマリア(MARIA)さん。

脚本には「スウェーデン人、若い夫婦、旅で汚れた服。不安そうに動き、神経質に、切羽詰まった目。ヨハンは痩せこけている。イングマール・ベルイマンの「恥」を参照。」とあります。

 

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 ・Breathe in .. And out

「ジェイはサイラスの声に合わせて深呼吸をする。サイラスは実際は(マリアさんではなく)ジェイへ話している。彼を落ち着かせ、指示している。やるように。」

結果的に ジェイ君がマリアさんを撃ち殺すことに。

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・若夫婦の子供たち

 「女の子は10歳、男の子は6歳。ブロンドの髪、かわいい。」

・サイラスの口笛

「yankee doodle」。アメリカ独立戦争時の愛国歌。

アメリカは残酷な世界なんだぜーとワルぶってますけど、心は泣いています。

日本だとアルプス一万尺

 

ジェイは口笛を吹くサイラスの背中を見て、血も涙もない奴と勘違いしてしまいます。ローズとの思い出や彼女と彼女のお父さんが追われる原因になった事件を思い返しつつサイラスの許を離れます。

 

■3日目

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・ワーナー(WERNER)さん

「ドイツ訛り」「見た目も聞こえもヴェルナー・ヘルツォーク似」だそうです。

彼が言っていることは観客の視点に通じるのかなというところ。選り好みの郷愁。美化して語られる過去。

優しそうなワーナーさんに出会うも、ジェイ君は気を許し過ぎて初対面なのにいきなり「人を殺しちゃった」と告白してしまいます。 

 

あと2日分ですが、ここから長いので分割します。

【続きの4日目.5日目はこちらへ。】