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slowな西なブログ

主に映画「スロウ・ウエスト」についてつらつらと。

スロウ・ウエストについて②(ネタバレ)

 

※ネタバレだらけです。未見の方は絶対に読まないでください!!

※話の流れに沿ってセリフ・アイテムの意味を「個人的に調べた範囲」で話します。

※全体の的確なレビューについてはBEAGLE the moviesさんを参照願います。

※以上大丈夫な方どうぞ

 

 

 

 

【ネタバレ②】

 

 ■4日目

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ワーナー「いくつかアドバイスが思いつくだろう。そして朝、面白おかしく盛り付けよう。新鮮な卵を添えてね」

翌朝目覚めると身ぐるみを剥がされてしまっているジェイ君。「西へ」と書かれた紙と生卵だけ置いてワーナーさんは去りました。

 

・ジェイ君が歩いた時間

脚本によると朝から昼までの「半日」です。彼にとっては「1週間何も食べていないかのような」空腹と疲労が襲っていたそうです。そこにサイラスとビスケット。

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・森に向かって平野を渡る2人

縦一列だった二人がだんだん横並びに…


・自ら切った木の下敷きになって死んだ人の変わり果てた姿

を見て、2人は並んで微笑みます。ジェイ君はダーウィン自然選択説(環境に適応した者が生き延びていく)を話し、サイラスはそれを拒否しています。

適応しない者。半日荒野を彷徨ったジェイ君は自分を重ね合わせてるのかもしれません。

それを否定するサイラス。


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・髭剃り

絶対にジェイ君髭生えてないと思うんですが笑

サイラスはジェイ君に大分心を許したんだろうというのが分かります。一種のスキンシップ…

ジェイ君は的確に「寂しがりや」とツッコミを入れ、サイラスを動揺させます笑


「how to skin a jack-rabbit.」というセリフがでます。

直訳だと「兎の皮はぎ」ですが、サイラスはナレーションで【兎=ジェイ君】の例えをしているので「ジェイ君の髭剃り」という意味になります。

男の子を野ウサギと例えるのもまた。大層かわいがっています。


このシーンでサイラスとジェイ君の立場が明確に変わり始めます。上下関係の逆転と言いますか、視点の転換と言いますか、ジェイ君が主人公の物語のはずがだんだんサイラスへ焦点が移ります。今まではっきり見えなかったサイラスの孤独・脆さ・優しさ・幼さが露わになっていきます。

 

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・ペイン が あらわれた

ずっと遠目からサイラスとジェイ君をストーキングしていたであろうペインが現れました。画像は宣材のもの。本編ではボタンを閉じてますが作る過程でボタンを外す案もあった模様です。えろすぎます。

ペインのコートは監督のインタビューを読む限りでは、「ギャンブラー( McCabe and Mrs. Miller)」や「アイアン・ホース」あといくつかの作品からきているとのことでした。寒いところから。山の方から来たのか。寒がり?

彼にはちょっと?ホモセクシャルな匂いがします。

「Fuck yourself Payne.」「I've tried...Believe me Ihave tried.」・・・。

 

アブサン

 アルコール度数70度前後の薬草系リキュール。別名「緑の妖精」。

ペイン「早い時間だが乾杯(To bad times in the green hour.)」とありますが、「グリーンアワー」という19世紀ヨーロッパでアブサンが流行し、仕事が終わった後にアブサンを飲むことをそう呼んでいたそうです。

森の緑とかけてるのか。ペインの台詞は洒落てるし含みがあるなと思います。しかしそれにしても未成年のジェイ君と酒弱いサイラスに無理やり飲ませるペイン。悪いヤツです。

アブサン - Wikipedia

芸術家が熱狂した「禁断の酒」アブサンを知る - NAVER まとめ

Bar Tram & Bar Trench: 第3回アブサン祭り”GREEN HOUR"(グリーンアワー)開催決定

Absinthe - Wikipedia, the free encyclopedia

 

・「日曜日生まれだろう?」

マザーグースの「月曜日に生まれた子供は」が元ネタだと思われます。

Monday’s child is fair of face,

Tuesday’s child is full of grace,

Wednesday’s child is full of woe,

Thursday’s child has far to go,

Friday’s child is loving and giving,

Saturday’s child works hard for a living,

And the child that is born on the Sabbath day

Is bonny and blithe, and good and gay.

 

月曜日生まれのこどもは器量がいい

火曜日生まれのこどもは品がいい

水曜日生まれのこどもはべそっかき

木曜日生まれのこどもは苦労をし

金曜日生まれのこどもは愛情豊かで

土曜日生まれのこどもは働き者で

日曜日に生まれたこどもはね、

可愛くて、明るくて、気立てがいい

 

マザーグースを知れば、英語も映画も物語もより深く理解できる!? | iKnow! BLOG(アイノウ ブログ)

 ジェイ君に「可愛いね…」とおちょくっているところのようです。悪い奴だ。

 

・ペイン「(ジェイも)俺たちと同じ立派なならず者だろう」

脚本には「この言葉はサイラスを悲しませたがジェイを喜ばせた」とあります。

 

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・ペイン「戻ってこい」

観た人が大体えっ!と動揺するシーン笑

過去この二人がどういう関係だったか匂わせます。

後のサイラスのナレーションで「ジェイの年齢の頃ペインの一味だった」とあります。

ジェイ君は16歳、サイラスは30代半ば…ざっと20年近くの縁なんだろうなと推測されま

す。

ペイン役の俳優ベン・メンデルソーンはインタビューでペインについて答えてます。 彼なりにサイラスを心配して近付いた、とのことです。

I’ve tracked him down. I know Fassbender from back in the day. He used to, as it were, run with my gang. I catch up to him and that’s a concern. For him, not for me.

 

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 ・ジェイ君、ほかのならず者たちに会う。

殺る気満々なキッドに対してスケリーおじいさんが「Back down kid, Payne needs him alive, you'll get your chance」と話しますが、字幕が違っていたような。

「下がれキッド。ペインは奴を生かすつもりだ。いずれチャンスはあるさ。」

名を上げることの無意味さ滑稽さをスケリーおじいさんは冗談を交えて諭します。

 

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・ジェイバード(Jay-bird)

個人的に、初見時度肝を抜かれたシーンです。ジェイ君とサイラスが同じ夢を共有するとは。ジェイバードは青カケスの意味です。青い鳥です。

ジェイ君はもちろん、後に登場するローズと仲良いインディアンの「コトーリ」のことも頭をよぎる名前です。

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アオカケス - Wikipedia

 

 ■5日目

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 ・目覚めると銃がない

脚本には「ペインは彼らの武器を全て盗んだ」とあります。犯人はペイン。

 

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・コトーリ(KOTORI)さん

「若く、ハンサムなネイティブアメリカン。開拓者のシャツとズボン」

2匹の大きな野ウサギを持ってます。意味深。

 

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・ローズ(ROSE ROSS)

ローズが作っているものはバターだそうです。バターってこんな作り方でしたっけ。これについては確証はないのですが、「 butter would not melt in one's mouth(虫も殺さぬ顔をしている、猫をかぶっている)」という言葉があります。後ほどのローズの凄腕ぶりを暗示しているのでしょうか。

 

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・サイラスとジェイ君を繋ぐ洗濯ロープ

何度見てもたまらなくかわいくて大好きなシーンです。服装も同じユニオンスーツで対になっています。兄弟のようでもあり、写し鏡のようでもあります。

 脚本には2人の間のロープの距離は「fifteen feet」(4.572メートル)とあります。

ちなみに2人とペインたちとの距離は「500yards」(457.2メートル)とあります。

100倍離れています。

 

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・シルバーゴーストの森で2人が諳んじているもの

ジェイ君が諳んじているのは「Psalm of David(詩篇91)」

サイラスが諳んじてるのはトマス・フッドの「幽霊屋敷」という英詩からの引用。

突然出てきたサイラスに詩の教養にジェイ君は驚き、笑みを浮かべます。サイラスのロマンチストな側面が見えます。

 

シルバーゴーストを抜け、ここから怒涛の銃撃戦がはじまります。

サイラスはジェイ君を木に縛り付け、日焼け止めを塗ってやり、ローズを助けに向かいます。

 

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・サイラスとローズの出会い

脚本には「サイラスはローズの美しさに感銘を受けた-ほんの少しだけ見えた片目だけでも」とあります。

ちなみに窓に貼られているのは油紙。

 

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案山子の帽子を被ったペインがビクターを背後から撃ち殺し、

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「ネイティブアメリカンの風見鶏」を撃ち本格的な銃撃が始まります。

 

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・サイラスが歌った曲

Am I a Soldier of the Cross という聖歌。

邦題は「十字架の兵士たる」(聖歌517番)または「私はキリスト教の闘士」

(Must) I be carried to the skies

On flowery beds of ease?

While others fought to win the prize,

And sailed through bloody seas?

 

私は天国へ運ばれてゆくのか

花で飾られた安楽な寝床にのって

他の者たちは金のために戦い

血生臭い海を渡って行ったのに

 

Isaac Watts, Hymn Writer biography - Christian Biography Resources

 

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・結末

初見時は本当に衝撃的で、気持ちの整理をつけるのに時間がかかりました…。

 

生き延びたい一心でローズは銃弾を放ち必中必殺で一味をペイン以外全滅させます。

ジェイ君は暗示していたとおり、ローズの銃弾に射抜かれ、最後の力でペインを撃ち殺し、ローズを守り、亡くなります。

サイラスはジェイ君の想いを受けとめ、ローズのところにとどまり、スウェーデン人の子供たちと一緒に農夫として暮らしていくのでした……。

きっと数年後にはジェイバードと呼ばれる男の子が生まれて、慎ましくもたくましい家族ができていく未来が見えます。

 

玄関に蹄鉄を上に向けて飾る

アイルランドの「幸運を招く」おまじないです。

サイラスのお父さんがアイルランド人なのでそうなりますね。

こうやって異国の文化がアメリカに根付いていくんだな、と感慨にひたります。

 



 ざっと調べたことは以上です。

多分もっと発見があると思うのですが、ひとまずまとめてみました。

何度観ても発見がありますし、この映画の前後の歴史も興味が沸いてきます。


この作品を観る以前、わたしは西部劇にずっと距離があったのですが、この映画ではじめて西部劇に親近感を覚えました。

この映画に出会えて良かったなと心から思います。ありがとうございますマクリーン監督…



調べたことの大半はスクリプトに載っています。

「Slow West script 」なんてweb検索するとすぐ出てきます。ト書きにユーモアがあり読みものとしてすごく面白いしページ数も80枚程度なので、英語少しでも読める方はオススメです。



映画の理解のきっかけになれば幸いです。

ここまで読んでくださってありがとうございました。